黒子(くろこ)(訟務関係文書表記統一ソフト)について

謝辞

 訟務関係では、大量に文書を作成します。しかも、文章表現は、国の定める基準や指針があって、それに合致していることが求められます。国の定める基準や指針は、「法務省訟務局 平成10年10月 訟務関係文書 用字用語例集(第五版)」などの形で公刊されています。

 実務上は、訟務関係文書が起案されるたびごとに、関係者によってその表記が統一され、適切であるかどうかをチェックする作業が行われます。訟務作業が多忙を極める中、長時間の神経の集中を求められる表記統一作業は、かなり大変な仕事です。

 実際、名古屋大学大学院法学研究科の関係者は、名古屋法務局との間で行われた訴訟関連作業を通じて、この表記統一作業の重要性とその大変さを知りました。その当時、名古屋大学大学院法学研究科は、ITを法学教育に生かすという方針で研究を行っていたこともあって、完全ではないにせよ、表記統一作業を機械的に処理できるソフトあるいはツールの開発を試みることにしました。

 同時に、この開発プロジェクトは、2004年に導入される法科大学院教育にとっても有益であると思われました。将来の法曹となる人たちが法学部や法科大学院の教育を通じて、専門的表現を統一的に使用することに慣れ、特に意識することなく、適切な表現を用いて専門的な訟務関係文章を作成できるようにることは、それ自体意義のあることです。さらに、電子化された訟務関係文書は、コンピュータを用いたさまざまな分析・検討や情報の統合を通して高度な情報の生成に役立てることができる可能性を秘めています。

 こうした判断と認識に基づいて、開発プロジェクトが2003年の末に始まりました。名古屋大学の法学部や法科大学院学生有志の方々の協力を得て、法務省訟務局の「訟務関係文書 用字用語例集(第五版)」を電子化する作業が行われました。大阪大学大学院法学研究科の養老真一先生は、法学教育の場でITを活用するという一連のプロジェクトを通して名古屋大学と共同研究を行ってこられました。養老先生には、表記統一ソフトの設計を引き受けていただきました。完成したソフトは、パソコンでの利用だけではなく、ウェブでの利用もできるようになっています。名古屋大学情報科学研究科の小川泰弘先生は、表記統一ソフトの名古屋大学での利用を容易にするための支援をされました。2005年度科学研究費学術創成研究「国際的ビジネス紛争の法的解決の実効性を高めるための新たなフレームワークの構築」の研究支援者である佐野智也さんは、ソフト開発のマネジメントに尽力されました。

 黒子(くろこ)というニックネームは、佐野さんの命名で、舞台の見えないところで役者の演技が滞りなく流れるようにつかえる役回りを果たすものという意味でつけられました。

2005年11月
名古屋大学大学院法学研究科
松浦好治



関係者一覧

監修
 松浦好治(名古屋大学)

メインプログラム
 養老真一(大阪大学)

Web版
 小川泰弘(名古屋大学)

辞書データ整備、プログラム整備
 佐野智也(名古屋大学)

辞書入力
 原さちこ(名古屋大学)



外部資料
 形態素解析は「茶筌」を使っています
 表記基準は、「法務省訟務局 平成10年10月 訟務関係文書 用字用語例集(第五版)」に基づいています