Let's FOCUS on the Deflation of Information

1.問題提起

    「情報は生モノだ」とは、特にコンピューターや報道の場面でよく用いられる言葉です。情報は、新鮮な、つまり新しいうちは価値があるが、その時期を過ぎると、しだいに「腐って」、価値を持たなくなるという意味です(しかしあまりに古いものは、逆に価値があります。例えば、エジプトのヒエログリフ(象形文字)など)。実際、情報とは、元はと言えばただの文字の羅列や、0と1のデータであって、その価値はその情報を扱う人々に強く依存するからです。

 最近、自分でもそれを痛感します。身近な例を挙げれば、古本屋に行くと、つい数ヶ月前に出たばかりの本が、定価の半値以下で売られていたりします。自分で定価で買った本が、半値以下で売られているのを見るのは非常につらいものがあります(; ;)CDについても、古いCDは中古なら半値以下で買えますよね。新聞も、いちいち講読しなくても、最新ニュースをタダで読むことができるようになりました。

 また、インターネットの普及により、この「情報デフレ」はいっそう急速に進むこととなりました。以前なら、レポートの調べものや研究資料を探すためには、図書館(学校なら図書室)に行くというのが一般的でした。しかし現在なら、(質はともかくとして)あらゆるトピックに関する情報がインターネットを通じて、しかもタダで、手に入ります。

 インターネットは、プライバシー、セキュリティー、著作権に関わる問題など、様々な社会問題を引き起こしています。しかし、このインターネットによって加速された「情報デフレ」は、見方を変えると、以前なら非常に貴重であった情報を、簡単に、安く手に入れることができるということを意味します。

 それなら、これをうまく利用しない手はありませんよね。

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2.結果

 最近、インターネットで本が無料で読めるサイトが意外に多くてびっくりしています。古本屋で一冊100円でも相当お買い得だと思うのですが、以下で紹介するサイトでは相当な数の本がタダで読め、「情報デフレ」を痛感せざるを得ません。

 以下に、僕がおすすめする"Digital Library"「電子図書館」をいくつか紹介します。

1.WORDTHEQUE - Word by word multilingual library
http://www.wordtheque.com/owa-wt/new_wordtheque.main?lang=en&source=search

 相当な数の文献が無料で手に入ります(トップページで自慢してるので一目瞭然ですが)。multilingual とうたっているだけあって、著者名で検索すると、その著者の、様々な言語で書かれている利用可能な著作がすべて表示されます。英語は言うに及ばず、独語、仏語、伊語などの文献も充実しており、第2外国語の練習にはもってこいです(英語よりもスペイン語、イタリア語が多いのは謎ですが(@_@))。

 このサイトには、日本語の文献もありますが、なぜか文字化けはするし、数もそれほど多くないので使えません。ただ、各文献には必ず"Source"「引用元」が書かれているので、そこをたどって行けば、ちゃんとした文献が手に入ります。

 お勧めすべきは"Children's Library"のコーナーで、その名の通り子供向けの本があります。といっても外国語で読む訳だから子供向けといってあなどれません。世界的に有名な童話などが数多く読め、しかもマルチリンガル対応なので、第2外国語の2年生の段階でちょうどいいレベルの文献がそろっています。

2.PROJECT GUTENBERG OFFICIAL HOME SITE - INDEX -- Free Books On-Line -
http://promo.net/pg/index.html

 約6000の文献があるそうです。ここもマルチリンガル対応なので、著者名で検索すると、英語以外の言語で書かれた著作も表示されます(ただしメジャーな言語だけ。日本語なんて期待しない方がいいです)。このサイトでは、扱っている著者リスト、タイトルリストがダウンロード可能なので、オフラインでの検索もゆっくりできて、ダイアルアップ接続の人(自分も(涙))にもうれしいですね。

 おもしろいのは、"Title word(s)"に"Chromosome"「染色体」を入れて検索すると、ヒトゲノム計画によって解読されたヒトの染色体の塩基配列(全部!)を見ることができます。これ、印刷したものが本屋で売ってたりするのでしょうか?

3.The Perseus Digital Library
http://www.perseus.tufts.edu/

 Perseusとは、あのギリシャ神話のペルセウスです。名前の示す通り、とにかく古い文献がたくさんあり、プラトン、アリストテレスなど、古代ギリシャ系の文献が充実しています。英語に続いて、ラテン語、ギリシャ語の文献が多く、まるで化石のような図書館です。(なんとなく雰囲気もかっこいいでしょ)

 余談ですが、このサイトにある聖書(World English Bible. ed. Rainbow Missions, Inc.)は、割と文体が新しく、非常に読みやすいです(高校生レベルの英語で十分読めます)。僕はクリスチャンではないのですが、聖書は、それ自体が要するに巨大な小説で、文学的作品として読んでみると、けっこう面白かったりします。個人的意見ですが、仏典やコーランでは、偉いヒトの言った言葉が(天下り的に)書いてある割合が大きいのに比べ、聖書では、物語自体が、より大きな比重を占めているような気がします。

 以上のサイトなどを上手に活用すれば、いわゆる「古典」と呼ばれている作品なら大抵手に入ってしまいます。

 これは岩波文庫も真っ青ですね。

 ただ、ほとんどの文献が英語なので、抵抗があるかもしれません。しかし、逆を言えば、現在、あらゆる国のほぼ全ての著作が(ある程度有名なものなら)英語に翻訳されているので、英語で読めない著作はほぼ無いといっても過言ではないでしょう。英語さえ読めれば、情報の幅がぐっと広がることになります。非常に便利な世の中になったものですぁ。

 ただ、やはり英語圏出身ではない著者は、その母国語で書かれている著作が一番充実している場合が多いので、第2外国語も捨てたものじゃないですよ。よくあることですが、翻訳がひどくて、その原典を読んだ方がよくわかった、なんて場合も多いものです。

 

4.(おまけ)Eric Weisstein's World of Mathematics 
http://mathworld.wolfram.com/

 おまけにしておくのはもったいないぐらい、有用なサイトです。上の3サイトが図書館なら、このサイトは巨大な数学の参考書といったところでしょうか。数学用語(人名、概念、アルゴリズム等、何でもOK)を検索すると、その用語(分野)について、基本概念、基本定理、定理の証明、関連する概念などを、式付きで非常に詳しくかつ高度に(しかもとてもわかりやすく)解説してくれます。理系の人にはぜひお勧めです。

 サイトは全て英語ですが、数学で式以外で使う言葉なんて、"therefore"とか、"because"とか、"when"とか(それぞれ「それ故」「なぜなら」「この時」に対応)、非常に限られるので、読むのは簡単です。途中でわからない(数学)用語があっても、その用語をクリックすると、ちゃんとその用語の説明のページに飛んでくれるので、とてもありがたいです。


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